地球の未来と生物多様性 ウィーク
ビッグ・データと生物多様性~ネイチャー・ポジティブ達成に向け、AIをはじめとする最新の情報テクノロジーは2050年までにどう活用され発展すべきか~
アジェンダ2025共創プログラム
シェイプ・ニューワールド・イニシアティブ
2050年の未来像の論点:膨大な生物や環境に関するデータをどこまで人類は取得・トラッキングできているべきでしょうか。得られたデータは誰が、何に利用できるべきなのでしょうか。そして、それらがどれだけ日常生活や企業評価に取り込まれているべきでしょうか。既存技術では補足しきれない生態系の見えない・予測できない側面に対し、社会はどう設計されているべきでしょうか。
生物多様性はかつてない危機に瀕しています。地球上の生物情報は実に多様ですが、私たちが現在アクセスできるのはそのうちの一握りです。AIをはじめとする情報技術が社会をすさまじい勢いで変えようとしている中、2050年にはそれがどう生物多様性保全、そして地球の未来に活用されているべきなのか、若者たちの考えを問います。
映像記録有り
対話プログラム
- 生物多様性
- ネイチャーポジティブ
- ビッグ・データ
| 同時通訳 | 提供する |
|---|---|
| 発信言語 | 日本語及び英語 |
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アジェンダ2025
共創プログラム
- 開催日時
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2025年09月27日(土)
10:30 ~ 12:00
(開場 10:00)
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- 開催場所
- テーマウィークスタジオ
プログラム内容
*字幕:YouTube動画の右下「歯車」マークの「字幕」よりお選び下さい。
(複数言語、音声が重なる際等、字幕が掲出されない場合があります)
生物多様性に関するデータは莫大で、私たちが今知り得ているのはそのごく一部にすぎません。生物多様性データは複雑で、これまで大規模に収集することには限界がありました。一方近年では、衛星技術やドローン、その他様々な方法を通し、森林や農地、その他生態系に関する情報がより効率的に集められ、正確な地球の姿が明らかになりつつあります。2050年の世界では、こうした情報を集めること、それらの情報を読み解くこと、そしてそれをもとにアクションを起こすことは、どこまで可能になっているべきでしょうか。情報主義の生物多様性保全を目指すべきなのか、それ以外の方法があるのか。AIスタートアップCEO、データサイエンティスト兼生物学者、自然保護活動家など、世界をリードする若者から率直な意見を聞きます。
実施レポート
【振り返り】
本セッションは、AIやビッグデータを活用して2050年までにネイチャー・ポジティブをいかに実装できるかを、多様な現場知と研究・ビジネスの視点から掘り下げる議論となりました。モデレーターは、まず聴衆と登壇者に「2050年を具体的に思い描く」ワークを促し、色・形・匂いまで想像してから現実の2025年に立ち戻る流れを作り、テクノロジーの話題に入っても人と自然の関係性を中心に据える姿勢を明確にしました。こうした導入によって、データやAIが自然を“上から管理する装置”ではなく、人間の感性や倫理に根ざした共生を支える媒介になりうるという前提が会場で共有されました。
最初の論点は、ビッグデータ/AIの効用と限界の整理です。井上和奏さんは、フィジーやキリバスでのマングローブ保全の実践から、衛星などのデータが植林地の健全性や生育ポテンシャルを広域に把握するうえで有効である一方、地域の経験知を置き換えるものではなく支えるものだと強調しました。たとえば「どこに植えるのが良いか」を直感的に知る住民の判断を尊重し、それを補強する形でデータを使うべきだという姿勢です。また、落ち葉から作るクレヨンの売上を再植林に回す取り組みを紹介し、参加のよろこびを可視化すること自体が継続の原動力になりうると述べました。
坪井俊輔さんは、衛星データ×AIで土壌・作付け・施肥の最適化を行う具体例を示しつつ、現場で使える形への翻訳の重要性を強調しました。開発途上地域では購買力の制約があるため、企業や政府が費用を担い、農家側にインセンティブが届くスキームを設計する必要があると説明しました。さらに、会議や集会の場で音声や写真を取り込むだけでAIが個々の農家に施肥や栽培変更の助言を返すような、利用ハードルの低い実装像にも言及しました。テクノロジーのエネルギー負荷や抽象性が生む距離感については、使い手に価値が伝わる形での設計が不可欠だとし、モデレーターの問いに応じて「アクセス」と「インセンティブ」の両輪を繰り返し指摘しました。
アナ・レイエスさんは、フィリピンのマスンギ地質保護区の保全経験を踏まえ、データ主権と公正なガバナンスの重要性を提起しました。AIやサステナビリティの枠組みがしばしば西洋中心の規範に依拠しており、グローバルサウスの文化的コンテクストが取りこぼされるリスクを指摘。第三者検証で企業報告の恣意性を抑えつつ、トップダウンの「偽解決」を回避するボトムアップの枠組みが必要だと述べました。さらに、「知られず、測られないものは過小評価されてしまう」とし、“測ること”が愛着と保護の起点になるというメッセージで、来場者の関与を促しました。
野生動物の専門家であるペク・スンユンさんは、GPS追跡・カメラトラップ・AI画像認識によって動物の移動や食資源の状況を把握し、人間との衝突リスクを事前に予測する活用例を紹介しました。ただし「なぜ衝突が起きるか」の原因は既に一定程度わかっているのに、社会の側が行動しないことが問題だとし、データの価値を実際の行動に結びつける仕組み設計が要ると強調しました。
議論の中盤以降、モデレーターは「テクノロジーのレンズだけで世界を見てしまう危険」をあえて提示しました。これに対し登壇者は、AIの可能性(パターンの可視化・早期警戒・資源の効率利用など)と、自然や地域社会とのつながりを増幅させるための“使い方”の要件を丁寧に応答しました。井上さんは「データは置換ではなく支援である」と繰り返し、坪井さんは地方での就業や実地の接点が増える将来像に触れ、人間が現場に戻ることを後押しする道具としてのAIを位置づけました。
Q&Aでは、来場者からデータの脱植民地化に関する鋭い問いが投げかけられました。データ基盤やAIが英語圏・先進国主導で設計される構造のもとで、グローバルサウスの当事者性や裁量が損なわれないか、意思決定の主導権をどう守るかという課題です。レイエスさんは、既存の枠組みの多くが西洋規範に依存する実情を認めたうえで、地域主導のフレームへ移行する必要を改めて強調しました。会場との応答を通じ、所有権・検証可能性・説明責任を含むガバナンスと、喜びや誇りといった情動の可視化を両立させることが、実装段階での鍵になるという理解が深まりました。
議論を通じ、登壇者からは、ビッグデータ/AIの活用等は、測ること(定量)と感じること(関係・物語)を往還させながら、AI/データを人と自然の“共育”を支える道具として設計されていくという方向性が示されました。また、技術のエネルギー負荷やプライバシー、地域間格差といったリスクも示しながら続き、インセンティブ設計とボトムアップの合意形成を通じて、2050年に向けた実効的な“使い方”を磨いていく必要があることが共有されました。
【会期後の取り組み】
登壇者は、会期後のそれぞれの研究、事業展開等における重要な視点として以下を挙げました。
(1)データと技術を地域にとって意味のある形で提供する取り組みを強化していくこと。
・ローカルの優先課題や伝統知と整合する形で、アクセス可能なダッシュボードや行動指標を整え、住民・現場・政策の意思決定に接続
・責任ある・公正なデータ・ガバナンスの枠組みづくりを進め、データ主権の確保、利益配分の公平性、第三者検証、説明責任を運用ルールへの組み込み
・企業・スタートアップ・政府・地域が連携し、インセンティブ設計を明確化することで、農業や保全現場が負担過多にならずに最適化された実践を採用できる環境の整備
(2)研究・技術開発
・衛星・センサー・カメラトラップ・GPSなどのデータをAIで統合し、生態系の理解と保護に資するモニタリングを高度化しつつ、システム自体の環境負荷を抑える工夫を推進
・都市では、緑地の審美性だけでなく、生物多様性の価値や生態系サービス(洪水緩和、ヒートアイランド低減、心身の健康)を設計・運用のKPIに組み込み、計画段階から評価できるモデルを拡大
・教育・普及面では、若い世代を中心に自然への驚きと情動的な接続を育むプログラムを展開し、消費者・有権者としての選択が生物多様性に配慮した方向へシフトするよう、分かりやすい情報提供を実施。これらを通じ、ステークホルダー間の協働を強化し、ネイチャー・ポジティブな成果を社会に実装すること。
※このレポートの一部または全部はAIによって生成されました。
出演者情報
モデレータ
ニニアン・ぺフゲン
ジュネーブ・サイエンスディプロマシー財団(GESDA)
GESDAにて、科学を活用し未来予測を行う、芸術・科学・外交の融合プラットフォーム “Public Portal to Anticipation”のプログラムリードを務める。スイス・デジタル・イニシアティブにてマネージング・ディレクターを経験。グローバル・シェイパー、アラムナイ。
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登壇者
坪井 俊輔
サグリ株式会社
横浜国立大学理工学部機械工学科卒。2018年、サグリを創業。衛星データやAIを活用した農地の見える化を通じたグローバルの農業と環境課題の解決に取り組む。Forbes 「世界を変える30歳未満30人」に日本版およびアジア版で選出。第6回宇宙開発利用大賞において内閣総理大臣賞を受賞。
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井上 和奏
Green Innovator academy 4期生/ 立命館アジア太平洋大学アジア太平洋学部
三重県出身。APU在籍中。トビタテ留学JAPAN15期生としてフィジー・キリバス留学中にマングローブの葉で作るクレヨンを開発し、売上の一部を植林費に充てるプロジェクトを開始。北海道洞爺の大地に触れ、自身や社会のあり方を見つめ直す宿泊型イベント「ちきゅう留学」にも携わる。
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アナ・レイエス
マスンギ・ジオリザーブ財団取締役顧問
フィリピン・サステナビリティ・インテリジェンス協会(Sustina)共同創設者。10年以上の経験を持つサステナビリティコンサルタントとして、国連や国際金融機関と連携し、環境基準策定や生物多様性保全、グリーンウォッシング対策、AI利用を主導。数多くの国際会議でも登壇。
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ペク・スンユン
東京農工大学 グローバルイノベーション研究機構 特任助教
東京農工大学で博士号取得後、同大学助教として在籍。大型哺乳類、特にツキノワグマが人間活動で変化した環境にどう適応するかを研究。GPS追跡や行動モデリング、分布解析などの手法を用いて野生動物の生態を解明し、人と野生動物の共存の道を探っている。
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地球の未来と生物多様性 ウィーク
ビッグ・データと生物多様性~ネイチャー・ポジティブ達成に向け、AIをはじめとする最新の情報テクノロジーは2050年までにどう活用され発展すべきか~
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2050年の未来像の論点:膨大な生物や環境に関するデータをどこまで人類は取得・トラッキングできているべきでしょうか。得られたデータは誰が、何に利用できるべきなのでしょうか。そして、それらがどれだけ日常生活や企業評価に取り込まれているべきでしょうか。既存技術では補足しきれない生態系の見えない・予測できない側面に対し、社会はどう設計されているべきでしょうか。
生物多様性はかつてない危機に瀕しています。地球上の生物情報は実に多様ですが、私たちが現在アクセスできるのはそのうちの一握りです。AIをはじめとする情報技術が社会をすさまじい勢いで変えようとしている中、2050年にはそれがどう生物多様性保全、そして地球の未来に活用されているべきなのか、若者たちの考えを問います。
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2025年09月27日(土)
10:30~12:00
(開場 10:00)
- テーマウィークスタジオ
- ※プログラム開催時間・内容は掲載時点の予定となります。変更については、当WEBサイトや入場券予約システム等で随時お知らせしてまいります。
- ※プログラムの性質上、実施主催者の都合等に因り、ご案内時刻等が変動する可能性があります。

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