EXPO2025 Theme Weeks

プログラム内容

高齢化社会の進展に伴い、がん、循環器疾患、呼吸器疾患といった非感染性疾患(NCDs)が社会の大きな課題となっています。健康寿命延伸のためにも、このNCDsを取り巻く様々な課題に対して、保健医療の変革の検討が必要とされています。このイベントでは海外または国内での変革につながる優れた取り組みを共有し、特に呼吸器疾患のうちCOPDを取り上げます。昨今明らかとなっている循環器疾患と関連についてなど、現在の課題とその解決策について議論をしながら、NCDsの診断や進展予防につながる医療システムの未来への道を探ります。

実施レポート

【振り返り】
日本では高齢化が急速に進行しており、がんやCOPD(慢性閉塞性肺疾患)などの非感染性疾患(NCDs)が深刻な社会課題となっています。本フォーラムは、NCDsの中でも特にCOPDに焦点を当て、革新的な取り組みや課題について意見を交わす場として開催されました。
開会の挨拶
開会の挨拶では、宮田 裕章先生(慶應義塾大学)、永井 良三先生(自治医科大学)より、COPDが気付きにくい疾患であり、進行時のリスクが大きいこと、また健診や社会制度に十分取り込まれていない現状について課題が共有されました。医療・行政・企業・市民社会が垣根を越えて協力する重要性、“Better Co-Being”という概念の意義、日本の高齢化やNCDsへの革新的ソリューションの期待が語られました。
トランスフォームケアのグローバルビジョン
アストラゼネカからは、慢性疾患・希少疾患・がん領域におけるグローバル課題への取り組みやAIなど革新的技術を活用した医療体制の変革、カーボンニュートラルの推進、世界各国での成功事例、COPDや腎疾患の早期発見、医療DXについて最新動向が報告されました。
海外におけるAZのトランスフォームケアの協業実績と成果について
海外のパネリストからは、医療制度の変革には現場と政策の協働、政治的支援、目標設定とエビデンス、財源やインセンティブの確保が重要である点が論じられました。ドイツのDMP(疾病管理プログラム)、台湾の肺がん検診、UAEの腎疾患・CO2削減の事例が紹介され、日本でも統合的なNCDs対策と早期介入、データ活用による変革が求められているとまとめられました。
健康日本21におけるNCDs対策とCOPDの位置づけ
江副 聡 先生(厚生労働省)、横山 彰仁 先生(松山市民病院、高知大学名誉教授)からは、「健康日本21」を軸に高齢化課題に対処し、NCDs・COPD対策を推進していることを解説いただきました。COPDの認知度向上や生活習慣改善、社会環境整備など多面的なアプローチが展開されていることに加えて、個人の行動変容とライフコース全体を意識した政策形成、「誰一人取り残さない健康づくり」を目指し、地域連携や国際協力も強化されていることが紹介されました。
政策決定を導くデータヘルスの役割
古井 祐司 先生(東京大学)からは健康寿命延伸のためのデータヘルス政策を解説いただきました。国民皆保険制度で収集される大量なデータを活用し、予防サービスや介入成果をKPIで評価し、全国・アジア各国へ知見を展開していく重要性や、EBPMによるウェルビーイング社会の実現を目指し、社会保障を「投資」に転換するヘルスケアトランスフォーメーションの意義が強調されました。
健康日本21のCOPD目標達成に向けたCOMORE-By2032活動と課題について/心肺リスクから考える最適なCOPD診療を考える
乗竹 亮治先生(日本医療政策機構)の進行で、室 繁郎先生(奈良県立医科大学)からCOPDによる健康寿命への影響や早期診断の必要性、COMORE-Byプロジェクトによる早期発見と多職種連携の推進、認知度・診断率向上やリソース確保の課題、健診段階からの介入体制整備について紹介され、隠れCOPD発掘による健康寿命延伸の重要性が呼びかけられました。
また、桑原 宏一郎先生(信州大学)からは、COPDと心血管疾患の関連性や診断の難しさ、スパイロメトリー普及の課題、循環器・呼吸器分野の連携強化の必要性について紹介され、さらなるエビデンス構築の必要性が示されました。
今後の展望とcall for action
石見 拓先生(京都大学)の進行で、パネリストに仲川 げん 市長(奈良市長)、坪井 永保 先生(福島県医師会・郡山医師)、室 繁郎 先生、桑原 宏一郎 先生、堀井 貴史(アストラゼネカ株式会社)を迎え、行政・医師会・医療従事者・企業がデータヘルスやAI、PHRなど医療DXを活用し、隠れCOPDの発掘や行動変容促進、ハイリスク群抽出の重要性が議論されました。市民が健康情報を活用できる社会の実現に向け、産官学民連携による共同宣言が発表され、その概要は会期後の取り組みにまとめます。


【会期後の取り組み】
日本における慢性閉塞性肺疾患(COPD)は、急速な高齢化により深刻な課題となっています。現在、治療を受けている患者は約38万人にとどまる一方、診断も治療もされていない潜在患者は500万人以上と推定されています。2023年の死者数は約1万6千人ですが、未診断の患者を含めると最大6万人に上る可能性もあり、実態は大きく過小評価されていると考えられます。同様に、COPDは国内統計で死因第16位とされていますが、グローバルヘルスオブザーバトリー(2021年)のデータでは第7位に位置づけられており、より正確な認識と対策が急務です。こうした現状を踏まえ、関係者が協力し、持続可能で革新的な解決策を見出す必要性について、以下の通り共同で宣言しました。

1. COPDの疫学的再定義とデータの充実化
現時点では、COPDに関する日本国内の疫学データは十分に整備されておらず、疾患の全体像が正確に把握されていない。今後は、国との連携のもと、科学的根拠に基づく明確な疾患定義の確立と全国的なデータ基盤の整備を進め、COPDの実態を適切に明らかにする。
2. 実地医療への支援ツールと病診連携の強化
COMORE-byや関連学会の知見を基に、一般診療医も活用できる簡便なCOPD診断支援ツールの導入を推進する。また、早期診断と早期介入の実現に向けて、病院と診療所の連携体制を強化し、地域医療における取り組みの効果を高める。
3. 循環器・呼吸器領域の多職種連携の推進
心臓と肺の機能は相互に関連しているものの、医療現場においては循環器疾患のある患者に対するCOPD管理の実施が十分に進んでいない。多科連携を強化するとともに、介護体制なども含めた包括的な患者ケア体制の整備を進める
4. 地域医療システムの継続とリソース確保
これまで地域医療におけるCOPD管理の推進に取り組んできたが、財源や人材の確保が課題となっている。今後は民間の資源活用も視野に入れ、医療DXを活用した一次スクリーニングやオンライン診療の導入など、新たな手法を取り入れ、持続可能な医療提供体制の構築を目指す。
5. PHRと臨床導入の仕組み構築
PHR (Personal Health Record)はCOPDの継続的な管理において有用な情報基盤となり得る。今後は、EHR (子 カルテ)との連携を進め、バイタルデータやライフログなどの情報を臨床現場で活用可能なシステムとして整備する。
6. 自治体主導のEBPMによる国施策への貢献
自治体が保険医療体制の改善に取り組む際には、同様の取り組みを行う他の自治体と連携し、実証事業の展開を拡充するとともに、その成果を国の政策形成に活用するためのエビデンスの蓄積が求められる。これらの取り組みを通じて、医療の成果指標に加え、効率性や費用対効果に関する指標の明確化を図る。
7. 変革の持続に対する継続的コミットメント
COPD医療における保健医療体制の継続的な改善には、複数年にわたる関係者の継続的な取り組みが重要である。関係者の異動や制度変更の影響を最小限に抑えるため、企業を含む民間の支援を得ながら、改善の持続性と推進力を維持し、地域主導で保健医療体制の発展を図る。

本提言は、健康寿命の延伸による患者のQOL(生活の質)の向上と持続可能な医療システムの実現を目指し、関係者が協力し、科学的アプローチと共創を通じて医療の未来を切り拓くことを目指しています。

出演者情報

モデレータ

宮田 裕章

慶應義塾大学医学部医療政策・管理学教室 教授

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Stefan Weber

バイスプレジデント グローバルポリシー,アドボカシー,ヘルスイクイティ アストラゼネカ

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乗竹 亮治

日本医療政策機構 代表理事・事務局長

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石見 拓

京都大学 大学院医学研究科 社会健康医学系専攻 予防医療学分野 教授

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登壇者

永井 良三

自治医科大学 学長

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Ruud Dobber

EVP バイオファーマシューティカルズビジネス アストラゼネカ

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Alexander de Giorgio-Miller

シニアバイスプレジデント グローバルメディカル バイオファーマシューティカルズ アストラゼネカ

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Stephen Holt

SEHA アブダビヘルスサービス 腎臓ケア 教授・ダイレクター・CEO, UAE

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Heinrich Worth

フュルト病院 呼吸器内科・心臓病学診療 教授, ドイツ

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George Wharton

ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス 保健政策 准教授, 英国

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Pan-Chyr Yang

国立台湾大学医学部 主任教授, 台湾

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江副 聡

厚生労働省 大臣官房 国際保健福祉交渉官

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横山 彰仁

厚生労働省 次期国民健康づくり運動プラン(令和6年度開始)策定専門委員会 委員、松山市民病院 顧問 兼 呼吸器・アレルギーセンター長、高知大学名誉教授

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室 繁郎

奈良県立医科大学 呼吸器内科学講座 教授

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古井 祐司

東京大学未来ビジョン研究センター特任教授、自治医科大学客員教授

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桑原 宏一郎

信州大学医学部循環器内科学 教授

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仲川 げん

奈良市長

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坪井 永保

福島県医師会副会長・郡山医師会長

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堀井 貴史

アストラゼネカ株式会社代表取締役社長

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共催者名

アストラゼネカ株式会社

未来のコミュニティとモビリティ ウィーク

健康寿命の延伸に向けたトランスフォームケア(保健医療の変革)

高齢化に伴い、がんや循環器疾患、呼吸器疾患などの非感染性疾患(NCDs)が大きな課題です。健康寿命を延ばすためには、このNCDsを取り巻く様々な課題に対して保健医療の変革の検討が必要とされています。このイベントでは優れた取り組みを共有し、課題と解決策を議論し、質の高い医療システムの変革を目指した未来への道を探ります。

  • 20250515日(木)

    15:0019:30

    (開場 14:30)

  • テーマウィークスタジオ
  • ※プログラム開催時間・内容は掲載時点の予定となります。変更については、当WEBサイトや入場券予約システム等で随時お知らせしてまいります。
  • ※プログラムの性質上、実施主催者の都合等に因り、ご案内時刻等が変動する可能性があります。

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