EXPO2025 Theme Weeks

プログラム内容

このディスカッションは「創造力が人と人をつなぐ」という理念が中心となります。——それは大陸を越え、世代を越え、分野を越えて広がり、古代の石工技術や伝統的な木工から、現代のデザインやアートのコラボレーションに至るまで、時を超えて受け継がれてきた技術がどのように現代において進化し、新たなつながりや表現のかたちを生み出しているかをこのディスカッションで追求します。

アイルランド西部の田園地帯にあるジョセフ・ウォルシュ・スタジオにて、様々なクラフトプロジェクトに携わった日本人職人である近藤正樹氏、渡辺圭氏、辻井博行氏の経験を紹介します。それぞれのパネリストがアイルランドでの経験を振り返り、自身のストーリーを共有します。


※登壇が予定されていたパトリック・オドノヴァン氏(文化・通信・スポーツ大臣)は、事情に因りご欠席となりました。本プログラムは、他登壇者にて実施されます。

実施レポート

「過去から学び、未来へ: ものづくりを通した創造性とつながり」と題された、非常に刺激的なパネルディスカッションでは、アイルランドと日本の視点から、創造性、工芸、文化遺産の深い交点を探求しました。このイベントでは、伝統の尊重、工芸の熟練、そして文化のアイデンティティから生まれるイノベーションの重要性という、両国の共通する価値観が強調されました。

議論の核心は「創造性は人々をつなぐ」というテーマで、創造的な表現が大陸、世代、分野を越えて隔たりを埋める役割を反映していました。パネルには、アイルランドのコーク県郊外にあるジョセフ・ウォルシュ・スタジオで20年にわたり様々なクラフトプロジェクトで協働してきた日本の著名な職人、辻井博行、渡辺圭、近藤正樹の3名が登壇しました。彼らの物語と経験は、伝統的な技術が現代社会に適応し、変化しながら、新しいつながりや表現を生み出していく様子を深く洞察するものでした。

アイルランドパビリオンの副総代表であるデニス・オズトゥルク氏がセッションの幕を開け、職人の技と文化交流によって築かれた永続的な絆を証明する「想像力が人々をつなぐ」というテーマに焦点を当てた会話の舞台を整えました。

ジョセフ・ウォルシュ・スタジオで働く最初の日本人職人である近藤正樹氏は、約20年前にアイルランドに到着した当時の思い出を語りました。スマートフォンやソーシャルメディアのない時代でした。近藤氏は、コーク県に到着し、滑走路のそばに羊が群れる光景に圧倒され、強い帰属意識を感じたことを回想しました。彼はウォルシュとの最初の食事体験をユーモアを交えて語り、ラム肉を選んだ理由を説明しました。その選択の背景を理解していなかった点から、文化的な違いと二人の友情の温かさが浮き彫りになりました。

近藤氏は、絵のように美しい農場の中に位置するワークショップの環境を説明しました。牛の鳴き声と世界中から集まった職人たちの創造的な活気が調和する空間でした。イギリスやドイツの職人から、フィンランド、フランス、アルゼンチン出身の職人まで、多様な視点が独自の創造的な雰囲気を生み出していると指摘しました。

ディスカッションが進むにつれて、近藤氏は、新しい技術に挑戦した当初の戸惑いを体現した「Figure Six Chair」など、自身が手掛けた作品をいくつか紹介しました。この作品は、新参者としての不安と興奮を反映したものです。また、積層技術による革新的な取り組みである「Sense」プロジェクトについても語り、伝統的なものづくりと現代的なデザインが融合している点を紹介しました。

プリズムテーブルも注目すべき作品で、X字型の構造に求められる高い精度が、複雑で強固なつながりで繁栄するクラフトコミュニティのメタファーとしてふさわしいものでした。各作品は、デザインだけでなく、文化間の関係性を物語り、協働と知識の共有の精神を体現していました。

最終的に、パネルディスカッションは、職人技の本質が国境を越え、共有された経験と学びの豊かな織物を作り出すことを示しました。これらのレジリエンス、創造性、つながりの物語は、文化交流がイノベーションと理解を刺激し、よりつながり合い、互いを尊重する世界への道筋を築き続けることを確認しています。アイルランドと日本がクラフトを通じてこれらの絆を育み続ける中、未来はさらに豊かな協働を約束し、想像力が真に人々を結ぶ時代が到来するでしょう。

【万博後の取り組み】

万博後の取り組み:工芸を称え、つながりを育み、次世代を鼓舞する

「過去から学び、未来へ: ものづくりを通した創造性とつながり」での豊かな対話と感動を糧に、私たちは、このイベントを特徴づけた交流と協力の精神を引き継いでいきます。工芸を通じて築かれた友情、伝統が革新へと進化すること、そして創造力を共有することで文化が融合することなど、このイベントで共有された物語は、私たちの次のステップの基盤となります。万博後の取り組みは以下の通りです。

1. 職人交流プログラム

アイルランドと日本の間で、職人が相互に相手国に住み、仕事をする機会を提供する、毎年恒例のアーティスト交流プログラムを設立することを目指しています。この実践的なプログラムでは、技術の共有、文化の浸潤、そして両国の伝統が融合した共同作品の制作を促進します。

2.「想像力が人々をつなぐ」展シリーズ

万博で語られた力強い物語に触発され、近藤氏をはじめとする職人たちによる作品や個人的な旅の軌跡を紹介する巡回展を企画しています。この展覧会では、「Figure Six Chair」、「Sense project」、「Prism Table」などの代表作を、それぞれの作品に込められた人間の物語を強調するナラティブコンテンツとともに紹介します。

3.デジタルストーリーテリング&アーカイブプロジェクト

これらの文化的な物語を保存し、広めるため、アイルランドと日本の職人の継続的なコラボレーションを記録したデジタルアーカイブを構築します。このアーカイブには、ビデオインタビュー、フォトエッセイ、共有された技術やデザインの進化を追ったインタラクティブなタイムラインなどが含まれます。

この取り組みは、職人技は歴史を保存するだけでなく、文化間の架け橋を築く普遍的な言語であるという信念に基づいています。アイルランドと日本の協力関係がさらに発展していく中、私たちは、想像力、尊重、創造性が私たちの共通の未来の中心であり続けるよう、これらのつながりを育んでいくことを楽しみにしています。

4. 工芸教育を通じた青少年の参加

両国のデザイン学校や工芸機関と提携し、若い職人のための教育モジュールやメンター制度を創設します。著名な職人の物語を共有し、技能向上の機会を提供することで、文化交流と職人技を大切にする新しい世代のクリエイターを育成したいと考えています。

5. 年次「クラフト&カルチャー」シンポジウム

このパネルディスカッションの成功を受けて、クラフトの分野における世界的な意見を集める年次シンポジウムの開催を提案いたします。アイルランドと日本で交互に開催されるこのイベントでは、パネルディスカッション、ワークショップ、展示会などを通じて、クラフトの伝統、革新、文化的アイデンティティに関する議論を深めます。

出演者情報

登壇者

近藤 正樹

木工作家

大学卒業後、飛騨高山で木工技術を学ぶ。アイルランドのジョセフ・ウォルシュスタジオにて研鑽を積んだ後、静岡県函南町に工房を構え、家具製作を行う。自然素材と流動的なフォルムを活かした作品を手がけ、個展やグループ展で発表を続ける。

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渡辺 圭

家具職人

建築士の父親の影響で幼少期よりものづくりに興味を持ち、大学卒業後、自宅家具のDIYをきっかけに家具製作を仕事にすることを決める。横浜、宮崎などで修行して身につけた技術、知識を組み合わせ、ナラ材を中心とした無垢材のオーダーメイド家具製作や拭漆による家具塗装に携わる。

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辻井 博行

造園家

大学卒業後は造園家を目指し、世界中で日本庭園を手掛けられた中島健氏の元で風景美を学び、家業の辻井造園で代々受け継がれた伝統の技を修得する。風景美と培われてきた伝統の技を織り交ぜ、日本の美と心を融合させる独自の感性と想像力で風景に馴染む庭を手掛け、滋賀を中心に海外でも活動している。

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共催者名

アイルランドパビリオン

未来への文化共創 ウィーク

過去から学び、未来へ: ものづくりを通した創造性とつながり

アイルランドと日本を象徴する特徴的な視点を通じて、「創造性」「クラフトマンシップ」「文化的遺産」の共通点を探る、心動かすパネルディスカッションに是非ご参加ください。本イベントでは、伝統への敬意、卓越した技術、そして文化的アイデンティティに根ざした革新の力という、両国に共通する揺るぎない価値を称えます。

※本プログラムでは同時通訳の提供はありません。日本語のみで実施されます。

  • 20250504日(日)

    11:0012:30

    (開場 10:30)

  • テーマウィークスタジオ
  • ※プログラム開催時間・内容は掲載時点の予定となります。変更については、当WEBサイトや入場券予約システム等で随時お知らせしてまいります。
  • ※プログラムの性質上、実施主催者の都合等に因り、ご案内時刻等が変動する可能性があります。

本プログラムへは予約が必須となっております。

原則「2カ月前抽選」から予約対象となりますが、詳細な予約開始時期、予約状況等については下記サイトをご確認ください。

※開演時間を過ぎた場合、入場できない可能性がございますので、余裕を持ってお越しください。

会場外でご観覧の方は、
ぜひ「バーチャルスタジオ」から
ご視聴ください。

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