EXPO2025 Theme Weeks

プログラム内容

登壇者は、「尊厳」を個人の本質的価値、自己決定権、社会における完全な参加の権利の認識として定義しています。尊厳は、排除や差別の人間的影響を明確にする点で、ジェンダーや社会的包摂に関する議論の中心となります。組織は、多様性方針を超えて、透明な採用・昇進プロセス、メンタープログラム、包括的な教育課程、権利に基づく政策枠組みなどを通じて、積極的にジェンダー、尊厳、インクルージョンを推進できます。意図せず特定の集団を排除してしまう例としては、硬直したヒエラルキー、ジェンダーに基づく暗黙の前提、マイノリティを考慮しない制度などが挙げられます。

根強い偏見には、能力に関する固定観念、性的指向やジェンダー・アイデンティティに対するスティグマ、リーダーシップ機会への不平等なアクセスなどがあります。これらは、個人の尊厳や自己効力感を損なう影響を与えます。保守的・抵抗感のある組織環境で対話を進めるためには、文化的に敏感なアプローチ、包括性が組織全体の利益であることの提示、信頼構築の段階的実施が重要です。

「誰一人取り残さない」という理念は、歴史的に排除されてきた声を含め、すべての人の意見を反映させることを意味し、人権原則を日常的な政策や実践に翻訳する努力が求められます。
メディアは、ステレオタイプを強化する一方で、過小評価されてきたグループの可視化にも影響します。法制度の整備は必要ですが十分ではなく、文化的・組織的変革が持続的な効果を生むために不可欠です。学術機関は不平等を分析するだけでなく、教育・研究・政策提言を通じて構造的障壁を解体する役割も担います。日本とベルギーの事例では、制度的スティグマを克服し、尊厳と包摂を回復した成功例も報告されています。若い世代は社会規範の再構築に重要な役割を果たし、持続的なアドボカシーと産学官連携が平等と社会的包摂の道を拓く希望となります。

実施レポート

【振り返り】
「ジェンダー、尊厳、社会的包摂」に関するパネルは、三人の優れた研究者による非常に力強く、示唆に富む議論となりました。印象的な言葉がいくつも飛び出し、聴衆に強い印象を与えました。それらの言葉は、その後に続いた基調講演やパネルでも繰り返し言及され、このパネルの重要性と、その後の「平和・人間の安全保障・尊厳」週間全体の議論に与えた影響を改めて示すものでした。

このパネルは、学術的な深みを持つ議論にとどまらず、私たちの大学同士の交流の重要な機会にもなりました。登壇者たちは見解を共有するだけでなく、今後も連絡を取り合うために連絡先を交換しました。これは、今回の週間の中心的な目標の一つである「つながりを育み、万博後も継続する協力関係を築くこと」に沿った成果でした。

実際、ベルギーの大学はジェンダー学や関連分野において、より国際的な協力の必要性を明確に示してきました。このパネルは、そのニーズに応える有意義な一歩となりました。異なる背景を持つ研究者が一堂に会することで、今後の共同研究や学術的対話の基盤が形づくられたのです。今回の交流をきっかけとして、今後さらに発展していく可能性があると強く感じています。

議論の中で特に印象的だったのは、「尊厳」を中心となるテーマとして積極的に取り入れていた点です。多くの場合、学術的・政策的な議論ではジェンダーや社会的包摂に焦点が当たり、「尊厳」という概念は見落とされがちです。しかし、このパネルでは尊厳を議論の中心に据えることで、問題をより広い視野で捉えることができました。平等や包摂は、個々人の本来的な尊厳を無視しては決して実現できない、という重要な視点を改めて思い起こさせてくれました。この要素が加わることで、議論に独自の豊かさが生まれ、類似の討論とは一線を画すものとなったのです。

総じて、このパネルは学術的な深さ、感情的な共鳴、そして具体的な成果を兼ね備えたものでした。私自身に強い印象を残しただけでなく、聴衆全体にとっても大きな意味を持ったことは、その後のセッションで繰り返しテーマが取り上げられたことからも明らかです。ここで生まれた議論は、今後のジェンダー学や関連分野の研究・協力関係に実際の影響を与え得るものだと感じています。私はこの経験を通じて大きな励ましを得ると同時に、今後の展開に対して強い期待を抱いています。


【会期後の取り組み】
現時点では、万博終了後に具体的な取り組みが明確に計画されているわけではありません。しかし、今回の「ジェンダー、尊厳、社会的包摂」パネルを含む一連のイベントの重要な目的の一つは、各国の大学や研究者同士のつながりを促進することでした。実際、パネルでは登壇者が連絡先を交換し、今後も対話を継続する意向を示すなど、活発な交流が生まれたことは大きな成果といえます。

現段階では新たなプロジェクトやプログラムは正式には立ち上がっていないものの、万博期間中に築かれた関係は、将来の協力に向けた強固な基盤となっています。特にベルギーの大学からは、ジェンダー学や関連分野における国際的な交流の必要性を以前から強調しており、この週を通じて生まれたつながりは、共同研究や学術交流、長期的なパートナーシップの可能性を広げるものです。

このように、万博の影響は即時的な取り組みにとどまらず、対話を生み、ネットワークを構築し、時間をかけて発展していく協力関係の扉を開いた点にあります。
今後の焦点は、こうしたつながりを育み、万博で共有された知識や経験、アイデアが将来的に実質的な共同プロジェクトへと結実させていくことにあります。

出演者情報

モデレータ

ジュスティーヌ・テゥーニセン

BelExpo

ジュスティーヌ・テュネッセン(Justine Theunissen) は、ベルギー国際博覧会委員会(BelExpo)でコミュニケーション・マネージャーを務め、2025年大阪万博におけるベルギー館のデジタルコミュニケーション全般を担当しています。
2022年の入社以来、パビリオンのウェブサイト、ソーシャルメディア、広報、イベントコミュニケーションを管理してきました。クルーヴェン大学(KU Leuven)で多言語コミュニケーション(オランダ語・フランス語・英語)の修士号を優等で取得。異文化間コミュニケーション、デジタル戦略、パブリック・ディプロマシーの専門知識を持ち、文化間の架け橋となり国際協力を促進することに情熱を注いでいます。グローバルな博覧会でのベルギーの存在感を広く発信する重要な役割を果たしています。

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登壇者

シャルロット・ペゼリル

ブリュッセル自由大学(ULB)

シャルロット・ペゼリル氏はブリュッセル自由大学人類学者、AIDS・セクシュアリティ観測所メンバー。HIV感染者が経験する偏見や差別を研究し、ベルギーのジェンダー学修士課程設立者。
性科学・臨床セクシュアリティ研究も指導。

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西岡 英子

大阪市立大学

西岡秀子氏は大阪大学ダイバーシティ&インクルージョンセンター教授・副所長。
元ジャーナリストで女性センター勤務経験を持ち、米国の「Searching for Excellence and Diversity Workshop」を日本に導入し、世界の大学でジェンダー平等を研究。性暴力やジェンダー政策に関する著作も多数。

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三輪 敦子

関西学院大学 総合政策学部 教授

三輪敦子氏は関西学院大学政策学部教授、アジア太平洋人権情報センター所長、SDGs市民ネット共同議長。
UN Womenや赤十字での経験を活かし、女性のエンパワーメントや権利に基づく政策、リーダーシップ育成に注力。国内外のジェンダー・人権施策に貢献。

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平和と人権 ウィーク

パネルディスカッション:ジェンダー、尊厳、そして社会的包摂

ジェンダー、尊厳、社会的包摂に関するパネルでは、人間の尊厳、平等、社会参加の重要な関係性を探ります。

登壇者は学術、政策、アドボカシーの分野での豊富な経験をもとに、ジェンダーやセクシュアリティ、社会的アイデンティティに基づく根強い偏見や排除の実態を明らかにします。
また、権利に基づく政策の導入や、ジェンダー・スタディーズ教育など、尊厳と包摂を促進する具体的な組織的取り組みを紹介します。保守的な場での対話の課題、法制度の役割、人権理念を日常の政策や実践に反映させる方法についても議論します。
パネルは、学術的・社会的文脈において「誰一人取り残さない」社会を実現するための道筋を探る場となります。

  • 20250804日(月)

    16:3018:00

    (開場 16:15)

  • 各パビリオン
  • ※プログラム開催時間・内容は掲載時点の予定となります。変更については、当WEBサイトや入場券予約システム等で随時お知らせしてまいります。
  • ※プログラムの性質上、実施主催者の都合等に因り、ご案内時刻等が変動する可能性があります。

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