食と暮らしの未来 ウィーク
インドの手仕事の布-ダーニング(繕い)によるサステナビリティ-刺し子とカンタ
インド
インドと日本の手仕事の布についてのパネルディスカッションでは、刺し子とカンタに焦点を当て、これらの伝統的な刺繍スタイルの文化的意義、技法、さらに現代とのつながりを探ります。
映像記録有り
対話プログラム
- サステナブルファッション
同時通訳 | 提供する |
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発信言語 | 日本語及び英語 |
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トラックプログラム
- 開催日時
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2025年06月12日(木)
10:00 ~ 12:30
(開場 09:30)
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- 開催場所
- テーマウィークスタジオ
プログラム内容
*字幕:YouTube動画の右下「歯車」マークの「字幕」よりお選び下さい。
(複数言語、音声が重なる際等、字幕が掲出されない場合があります)
日本の刺し子の技法は、幾何学模様のシンプルなランニングステッチを使い、布地を補強し、ぬくもりを生み出す方法として生まれました。インド発祥のカンタは、古い布を重ね合わせ、複雑で、しばしばストーリーに基づいたデザインで縫い合わせます。
このセッションでは専門家が集い、日印の伝統がサステナブルな実践からどのように生まれたか、現代のファッションやデザインへの進化、そしてこれらを守る職人の役割について話し合います。また異文化や世界への広がりや、これまでの営みを尊重しながら新しいものを取り入れる必要性も強調します。
実施レポート
【振り返り】
このパネルディスカッション「インドの手仕事の布 - ダーニング(繕い)によるサステナビリティ - 刺し子とカンタ」では、日本とインドにおける伝統的な刺繍の文化的・持続可能性の意義が探求されました。
CALICO代表の小林史恵氏は、日本の繊維文化に根付いた哲学とその歴史的発展について語りました。刺し子は、必要に迫られて生まれた伝統的な繕いの技法であり、仏教的倫理観とともに発展してきたことを紹介。特に日本の北部地域では、天然繊維と重ね縫いによって保温性と耐久性を高める技法として用いられてきました。
さらに、インドのカンタに見られるように、古布に家族や個人の物語を刺繍するという共通点にも触れ、布を通じた再利用、尊重、物語性という価値観の共有を強調しました。また、東京の岩立フォークアートミュージアム所蔵、岩立広子氏のカンタ・コレクションも紹介しました。
ファッションブランド「11.11」の共同創設者シャニ・ヒマンシュ氏は、インドの伝統的なクラフトに根差した持続可能なファッションの現代的アプローチを発表。彼の取り組みでは、先住民の手織り技術、植物染料、廃棄ゼロの生産手法が採用され、NFCチップを通じて製品と職人の透明性を確保しています。特にカッチ地方のラバリ族やムトワ族などの刺繍文化を現代のファッションへと再解釈している事例を紹介。余った布を無駄にせず、テキスタイルアートとして再利用する手法も披露しました。
インド繊維省の貿易顧問シュブラ氏は、インド政府による繊維分野の持続可能性に向けた取り組みについて説明。パニパット・クラスターや、インドに深く根ざした繕い、修復、リサイクルの実践に触れました。また、刺し子やカンタに見られる日本とインドの文化的な共通点や「繕いの美」についても語られました。
3名の登壇者は共に、繊維が単なる素材ではなく、物語、文化的記憶、倫理的実践を運ぶ器であることを示しました。ここで示されたサステナビリティとは、単なる技法にとどまらず、過去と現在を結びつける価値に根ざした包括的な枠組みとして描かれています。
【会期後の取り組み】
2025年大阪・関西万博における「インドの手仕事の布-ダーニング(繕い)によるサステナビリティ-刺し子とカンタ」の示唆に富んだパネルディスカッションを受けて、インドは伝統工芸の保護と持続可能な繊維産業の発展に向けた取り組みをさらに強化していく姿勢を示しています。
ファッションブランド「11.11」の共同創設者であるシャニ・ヒマンシュ氏は、万博後に向けた繊維およびファッション分野の先進的なイニシアティブを紹介しました。
主な焦点の一つは、インド固有の伝統的な手法に根差したサステナブルファッションの継続的な発展です。「11.11」では、手織り、天然染色、手刺繍といった技術を現代的なデザインに取り入れており、今後は環境責任を維持しつつ生産の拡大を図る計画です。NFCチップを用いた職人から製品へのトレーサビリティの確保、徹底した廃棄ゼロ方針といった革新的な取り組みもさらに発展される予定です。
これらのアプローチは、環境意識の高い国際的な消費者にアピールするだけでなく、職人の労働に透明性と尊厳をもたらす仕組みを築いています。
また、政府および民間セクターの関係者は、伝統工芸の担い手たちに対するトレーニング、デジタルアクセス、国際舞台での発表の機会などを通じて、彼らの活躍を支援していく方針です。急速に変化する世界においても、これらの伝統が息づき続ける環境を整えることが目指されています。
さらに、万博期間中に行われた日本のアーティストや研究者との異文化対話に触発され、インドは長期的な文化交流と協働の構築を目指しています。これには、共同展覧会、技術共有のワークショップ、インドと日本の職人による教育レジデンスの開催などが含まれており、創造的な交流の場であると同時に、両国の繊維哲学への相互理解と敬意を育む機会として位置づけられています。
インドの万博後の取り組みの中核には、「布」を単なる商品ではなく、文化的な物語を伝える媒体として再定義する姿勢があります。カンタや刺し子のような刺繍技法を通じて、布は物語や記憶、精神的な省察を表現する手段となります。
インドはこのような価値観を世界に発信し、物質的効率性を超えた倫理的・感情的・歴史的次元を含むサステナビリティの在り方を提唱していきます。
インドの万博後ビジョンは、包摂性、持続可能性、そして文化的整合性を基盤としています。これらのイニシアティブは、インドを卓越した繊維生産国としてだけでなく、倫理的かつ創造的な産業の先導者として国際社会に位置づけることを目指しています。このビジョンは、国際的な文化外交、農村部の職人の経済的エンパワーメント、そして素材・作り手・伝統を尊重するファッション産業の進化に大きく貢献することでしょう。
出演者情報
登壇者
シャニ・ヒマンシュ
ファッションレーベル”11.11”創設者
ファッションデザイナー
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シュブラ
インド政府繊維省貿易顧問
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小林 史恵
CALICO代表
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共催者名
インド国立ファッション技術大学(NIFT)
食と暮らしの未来 ウィーク
インドの手仕事の布-ダーニング(繕い)によるサステナビリティ-刺し子とカンタ
インドと日本の手仕事の布についてのパネルディスカッションでは、刺し子とカンタに焦点を当て、これらの伝統的な刺繍スタイルの文化的意義、技法、さらに現代とのつながりを探ります。
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2025年06月12日(木)
10:00~12:30
(開場 09:30)
- テーマウィークスタジオ
- ※プログラム開催時間・内容は掲載時点の予定となります。変更については、当WEBサイトや入場券予約システム等で随時お知らせしてまいります。
- ※プログラムの性質上、実施主催者の都合等に因り、ご案内時刻等が変動する可能性があります。
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